睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは、何らかの原因で睡眠中に呼吸が何度も停止もしくは低呼吸状態になる状態のことを言います。
睡眠中1時間あたり10秒以上の呼吸停止が5回以上ある場合を「呼吸停止」、睡眠中1時間あたり呼吸が10秒以上、50%以下に低下している場合を「低呼吸状態」と定義されています。
日常的にSASの状態が続いていると、睡眠中も息苦しさのために目が覚めやすく、眠りが浅くなり、熟睡感が得られにくくなります。
そのため十分な睡眠時間をとっていても、日中の活動時にも強い眠気に襲われてしまうなど、以下のような様々な症状が現れるようになります。
また、夜間も体が休まらず交感神経が活性化された状態が続くために、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中などの重大な病気も起こりやすくなってしまいます。
以下のような症状は、睡眠時無呼吸症候群が疑われます(例)
- 大きないびきをかいている
- 日中(活動時)に強い眠気に襲われる
- 熟睡感がない
- 記憶力が低下している
- 夜間に何度もトイレに行く(何度も目が覚める)
- 起床時に頭痛がする
- 車を運転中に居眠りをしてしまう
- ED
眠気の評価(ESS; Epworth sleepiness scale)
日中に強い眠気があるという方には、ESS(Epworth Sleepless Scale)テストを行います。
次の8つの状況で眠気を感じる場合には、SASの可能性が高くなります。
- 座って読書をしているとき
- テレビを見ているとき
- 公の場で座って何もしないとき(観劇や会議など)
- 1時間続けて車に乗せてもらっているとき
- 状況が許す場合で、午後に横になって休息するとき
- 座って人と話しているとき
- アルコールを飲まずに昼食をとった後、静かに座っているとき
- 車を運転中、交通渋滞で2~3分停止しているとき
OSAとCSA
SASを発症する原因は、主に2つあると言われています。
そのうちの1つが閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)で、SASの9割以上を占めています。
睡眠中に物理的に気道が閉塞してしまうことで、呼吸が一時的に停止あるいは低呼吸になる状態を言います。
狭い上気道を空気が通る時に鳴る音が「いびき」として聞かれるため、OSAでは睡眠中のいびきが特徴的ですが、完全に閉塞してしまうといびきも聞こえなくなります。
OSAが起こる理由は、もともと横に寝ると重力の影響で上気道が狭くなりやすいことに加えて、特に肥満により首回りの皮下脂肪がつきすぎていると、上気道が外側から圧迫されて閉塞しやすくなるためです。
またやせている人でも顎が小さい場合は、喉の断面積が小さいために狭窄・閉塞しやすく、OSAになりやすいと考えられてます。
もう1つは、脳からの呼吸命令が出ないことで呼吸困難となる中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSA)です。
この場合は呼吸中枢に異常が起きている状態なので、気道が閉塞されているわけではありません。
したがって、CSAではいびきの症状はありません。
CSAの原因として、心不全などの心機能低下、脳卒中などの脳疾患などの病気が引き金となっていることがほとんどです。
そのためCSAが判明した場合は原疾患の治療が優先されます。
さらに、OSAとCSAの原因をあわせもつ混合型のSASもあります。
SASを発症すると、高血圧症、狭心症・心筋梗塞、不整脈、脳卒中、糖尿病などの命に関わる重大な循環器系の病気のリスクが、健常者よりも2~3倍以上高くなると言われています。
このような病気を未然に防ぐためにも、SASの早期発見・早期治療が重要です。
検査について
SASが疑われる場合、簡易型検査装置によるスクリーニング検査を行います。
これは、手の指や鼻の下にセンサーを付けて眠るだけという簡単な検査方法で、当院から検査機器を貸出、ご自宅で検査していただくことができます。
この検査では、睡眠時の呼吸状態やいびきの有無などを計測します。
その結果、詳細な検査が必要と判断されれば、一晩病院に入院して、身体に多くのセンサーを付けて眠り、睡眠と呼吸の質を調べるポリソムノグラフィーを行います。
治療について
SASと診断されたら、治療としてまずは減量、生活習慣の改善、口腔内装置(マウスピース)などを行います。
これらの治療がうまくいかない場合や重度のSASでは、経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP;Continuous Positive Airway Pressure)が行われます。
CPAPとは、睡眠時に専用の鼻マスクを装着し、一定の圧のかかった空気を気道に送り込むことで、気道を押し広げる治療です。
これにより、呼吸停止状態や低呼吸状態が解消されて中途覚醒や不眠、いびきなどの症状がなくなるだけでなく、重篤な合併症である心筋梗塞や脳卒中などのリスクも減り、死亡率も下がります。
なおCPAP療法を行っている最中は、体調変化や治療状況などを医師に報告する必要がありますので、定期的にご来院いただくことになります。